2008年 09月 26日
2008年10月5日(日)〜11月3日(月) 午前10時〜午後6時(最終日午後3時まで) 夢の庭画廊(木曜休廊) “中村ブラウン”を超えた新たなる自然を創る 赤津侃 “中村壁”アーティスト・林正彦は進展し深化した。土の持つイメージの喚起力を自在に引き出し、表現の密度と緊迫感が増した。林の「自分のなかの中村壁研究」の成果である。ふるさと飯田市の幻の中村壁を左官と新聞記者と共に探し歩き、風土のなかの美意識に感銘した。「南信州新聞」に掲載された、そのルポはアートと地域の問題探究としても興味深かった。 表現の欲動が一気に解き放たれた感慨を覚えるのは、大作「デルタの神話」(1と2) と「ノンティトロ(無題)」。土の赤みが減り、黒やグレーが画面全体に広がり、布の動静著しいうねりやたわみが目立つ。周到にして細心を極めた仕込みぶりで土の豊かさとやさしさを引き出す。そこに凝縮するものは、宇宙的なダイナミズムと闊達な生動であり、生成感である。精妙この上ない土の積層感のニュアンスと空間の雄大さに圧倒される。林と土の織りなす行為の痕跡は、両者の記憶と時間の像を呼び起こし、構築された新たなる自然とも呼ぶべき鮮烈極まるイメージがほとばしってくる。 見応えたっぷりの新機軸の展覧だが、林は「中村壁後」の構想をもっているようだ。現実を超えようとする持続する志をもち、表現に対する立闘いをやめない姿勢に注目する。 (あかつ ただし・美術評論家)
by yumenoniwa
| 2008-09-26 22:38
| 夢の庭画廊
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